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渡辺 信一郎
Shinichiro Watanabe
渡辺 信一郎
アニメーション監督
キャラクターに命を吹き込み
記憶に残る作品を作り出す職人の競演

6月10日から5日間に渡って開催されたCFC Worldwide Short Film Festivalで上映された『Genius Party』と『Genius Party Beyond』。合わせて12名の気鋭クリエイターが集結して作られた、豪華な短編アニメーション・オムニバスだ。『鉄コン筋クリート』や『アニマトリックス』、『マインド・ゲーム』などの優れた作品を生み出している精鋭クリエイティブ集団STUDIO4が企画したこのオムニバス作品は、昨年夏に日本で公開された際も大きな話題を集めた。今回は、その『Genius Party』のトリを飾るにふさわしい作品『BABY BLUE』の渡辺信一郎監督にお話を伺った。

『BABY BLUE』は柳楽優弥さん、菊地凛子さんが初の声優に挑戦していることでも注目されている青春ラブストーリー。スタイリッシュな作風で高い評価を得ている渡辺監督の軽やかな青春モノ、意外なテーマの作品にまず驚いた。

インタビュアー(以下、I)「他に手がけられた作品と比べると、ピュアな感じでイメージが違うと感じました」

渡辺監督「他のはピュアではないということですか?(笑)
今回、(『Genius Party』に参加した)他の監督はみんな絵描きなんですよ。絵描きだから自分を出すのは絵ということになるじゃないですか。でも、僕は自分では絵を描かないので、絵以外の方法で自分を出して(表現して)いくにはと考えた時になるべく自分のベーシックな部分というか、たとえば、10代の時の感覚など、自分の現在の元になったフィーリングというものを出していきたいなと思ったんです。そういうところから作風が違っていったのかなと思います」

「アニメだけでなく実写映画もお好きだと伺いました。『BABY BLUE』のカット割りは実写のそれに似ているという感じがしたのは、実写映画を意識されているからでしょうか?」

渡辺監督「でも実は(アニメ映画のカメラワークを)そのまま実写で撮っても上手くいかないんですよ。そこの解説はあまりにも細かすぎて一晩ぐらいかかるので…(笑)。
アニメと実写の作品には、やっぱりお互いに得意な表現と苦手な表現があって、それを使いわけるんです。たとえば、アニメのキャラクターは線で描いたものなので、カメラをどんどん顔に寄せていっても、何も出てこない。でも実写は、カメラを寄せるとディティールなり、シワなり、味わいみたいなものが出てきます。アニメはぺったりとした絵になってしまうだけ。たとえば、ちょっと寂しさを出す時は、寂しい顔をバーンと大きく出すということをアニメでやってもあまり意味がないんですよ。そういう時は、誰もいない廊下、前のシーンでそこにキャラクターがいた廊下をもう一度写して、”前にいた主人公たちがもういないよ“という表現などを使って気持ちを出すんです。同じ事を表現するにも、アニメはちょっと違うんですよ」

「なるほど。監督が実写映画の監督ではなく、アニメ監督の道へ進もうと思ったのも、その奥の深さが面白いと思われたからですか?」

渡辺監督「いや、どちらへ進もうか、と考えた時、実写よりもアニメ監督の方がなりやすかったから(笑)」

「そうなんですか(笑)。多大な影響を受けたアニメ作品があったのではなく? 宮崎駿監督の作品とか、ディズニーとか…」

渡辺監督「いや〜、影響は受けてないですね。ディズニーには少し? いや、そんなことはないな…。あの『ダーティハリー』ですね。あれはいいですよ」

「すみませんがその映画は観たことがないです。観れば監督のおっしゃっていることが理解できるでしょうか?」

渡辺監督「いや、観ても大体わからない(笑)。昔の映画は今の作品とは違ってね…。今は飽きさせないようにどんどん話が進んでいくし、ちょっとした”だるい間“を作らないじゃないですか? 昔はそんなことなくて、だるかったり、話と関係ないシーンが続いたりするんです。でもそれ(その良さ)が分からないみたいで、困惑されることがあるんです。話を進めるためだけのキャラクターだったらそれこそチェスの駒と一緒でね。関係ないことをしたりするからこそ、そのキャラが一人の人間として生きているように感じるし、映画の外でもちゃんと存在しているような人として描けると思うんですよ」

「だるい間にも大切な役割があるんですね」

渡辺監督「そう。これ、いらないんじゃない? と言われるんですが、そんなことはない。これがあるから、キャラクターが生きているように見える。無駄話も大事。必要なことだけ話すわけじゃなく、(実際の人間は)くだらない話もするじゃん、っていうね(笑)。
特に今のハリウッド映画は本当に味がない。話に関係ないところは一切飛ばしてしまうのでね」

「手描きの良さを守っていきたいと上映会で挨拶されましたが、味気ない作品ばかりになったと感じておられることからでしょうか」

渡辺監督「特にアメリカでは、3Dの方が安く、早くできるからっていうのがあって、手描きがなくなってきていますね。また、ピクサーのような3D作品がヒットして、(手描きの時代は)もう終わったと勝手に判断されてしまっているんですけど、そんなことはないと僕らは思っています。3Dの技術が発達して、手で描くより人件費が安くなってきましたが、3Dのアニメというのはどうしても味気なく感じます。人形が動いているように見える。
上映・放映からだいぶ時間がたっても覚えていてもらえる、心に残る作品を作りたいですからね」。

(インタビュー/西尾 裕美)

渡辺 信一郎
わたなべ しんいちろう
1994年のオリジナルビデオアニメ『マクロスプラス』で監督デビュー。98年、TVアニメ『カウボーイビバップ』で高い評価を得た。その後、時代劇アニメ『サムライチャンプルー』(04)も日本国内外で大ヒット。音楽に造詣が深く、『マインド・ゲーム』(04)では音楽監督を務めている。STUDIO4℃制作の『Genius Party』(07)には、短編『BABY BLUE』で参加。
STUDIO4℃サイト:www.studio4c.co.jp

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